真鯛とチダイの違いを徹底分析!【見分け方・味の比較】

  • 2023年6月15日
  • 料理
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マダイ(真鯛)とチダイ(血鯛)の違いを、皆さんはご存知だろうか。

「真鯛」は非常にポピュラーな魚。一般的に「タイ」と言えばこの真鯛を思い浮かべる方がほとんどで、恐らく知らない方はいないであろう魚の王様的存在。

一方、スーパーなどでたまに見かける「チダイ」。ハナダイとも呼ばれる。その風貌は真鯛と瓜二つだが、実は真鯛とは別物。

先日、偶然にも同じサイズの「真鯛」と「チダイ」を釣り上げた。そこで今回は、同じ日に、同じ場所で釣れた、同じサイズのその二種の魚をサンプルに徹底的に比較分析し、見分け方、味の違いなどについて整理したい。

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真鯛とチダイの基本情報

真鯛とチダイ

まずは真鯛とチダイがそれぞれどんな魚なのか、基本情報を簡単に整理しておきたい。

真鯛チダイ
分類タイ科マダイ亜科マダイ属タイ科マダイ亜科チダイ属
大きさ〜90cm〜40cm

平均卸売価格(1kgあたり)

約1000円約650円
春・秋

上図の通り、真鯛はタイ科マダイ亜科マダイ属に分類される。一方でチダイはマダイ亜科チダイ属となり、分類として別物とされていることがわかる。

大きさ(成長の仕方)も全く異なり、真鯛は大きいもので90cmを越えるものもあるが、チダイは40cm程までにとどまる。

取引価格も、やはりタイの本家「真鯛」の方が高く、特に年末年始の12月、1月には縁起物として需要が高まり、卸売価格は1500円弱まで上がる年もあるらしい。

その他生態の詳細は、ぼうずこんにゃくさんの市場魚貝類図鑑が非常に分かりやすく参考になる。

真鯛とチダイの見分け方のポイントは3つ

真鯛とチダイの比較

上の写真は真鯛とチダイを並べたものであるが、皆さんは一目で見分けられるだろうか。

真鯛とチダイを見分けるポイントは3つある。以下にその詳細をご紹介する。

エラブタの縁の色の濃さ

真鯛のエラブタ
真鯛のエラブタ
血鯛のエラブタ
チダイのエラブタ

上の写真をご覧いただきたい。真鯛とチダイのエラブタの違いがお分かりいただけるだろうか。

チダイのエラブタは、真鯛のそれに比べ赤く太く縁取られている。チダイの名前の由来は、その血のように赤いエラブタから来ているという説もあるようだ。

しかし、この差は両者を比べてはじめて分かるもので、実際にチダイが単体で釣れたときに、そのエラブタが真鯛より赤く太いのかどうか、判別が難しいのではないだろうか。「チダイっぽい気はするけど…きっと真鯛だ!」と、真鯛を望むあまり判断を誤ることも考えられる。そこで次のポイントも確認して欲しい。

背びれの棘の長さ

真鯛の背びれ
真鯛の背びれ
血鯛の背びれ
チダイの背びれ

真鯛とチダイの見分け方のポイント2つ目は、背びれの棘の長さの違い。

上の写真の通り、真鯛の背びれの長さは段々状にキレイに整っているのに対し、チダイの背びれは、2本目と3本目の棘が長く突きだしていることが分かる。

これらの見分け方で真鯛とチダイはほぼ確実に判別できるはず。しかし、例えばスーパーで「タイ」なるものを見つけたとき、下の写真のようにトレイに梱包された形で売っていたらどうだろう。

スーパーのチダイ

…そこにシール貼らないでよ!という例。完璧なまでにエラブタを隠されている。しかも梱包されているため背びれも確認不可。写真の例はチダイなので買っても損はないが、「マダイ」として売られていたら、損をする可能性がある。そこでもう一点、確実に違いを確認できる見分け方をご紹介したい。

尾びれの縁の色に注目

真鯛の尾びれ
真鯛の尾びれ
チダイの尾びれ
チダイの尾びれ

真鯛とチダイを見分ける最大のポイントが、尾びれの縁の色の違い。上の写真をご覧いただければ一目瞭然だ。

真鯛の尾びれは黒く縁取られているのに対して、チダイの尾びれにはその縁取りがないことがお分かりいただけるだろう。

この尾びれの差が、真鯛とチダイを判別する一番分かりやすいポイントかと個人的に思う。先ほどのスーパーのチダイの写真をご覧いただいても、それが本当にチダイであることが分かるはず。

上記の3つのポイントをおさえていれば十分だが、その他、真鯛の方がチダイに比べて鱗の赤の色味が若干濃いことなども判別要素としてあげられる。

また、この2匹を釣り上げた際の引き味を比較したとき、チダイの方が1cm程大きかったにも関わらず、引きはチダイよりも真鯛の方が強かった。どちらもノーシンカーで釣ったため、魚の重みのみを直に感じた印象だ。

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真鯛とチダイの味の違い

見た目はそっくりな真鯛とチダイであるが、「食味」は違うのか、今回私が釣り上げた真鯛とチダイをサンプルに食べ比べてみたいと思う。

このサンプルは同じ日に同じ釣り場で釣ったもので、釣った直後に血抜きし直接氷を当てないようビニールに包んだ上で、海水と氷を入れたクーラーボックスで持ち帰り、帰宅後に即捌いた保存状態抜群のサンプルである。これにより、その身本来の食味を保つことができ、両者の味の微細な違いも感じ取れるはずだ。

真鯛とチダイの二枚おろし

今回はこの二匹を二枚おろしにし、「焼き魚」「刺身」の2パターンで味を比較する。

焼き魚での味の違い

真鯛とチダイの半身

真鯛とチダイを焼き魚にして味を比較してみる。上の写真をご覧いただきたい。下が真鯛、上がチダイであることはもう説明不要だろう。どちらもきれいな白身だが、チダイの方が色が若干白っぽく、脂がのっている印象だ。

皮目に塩を振り10分程おいてグリルで焼くと

真鯛とチダイの焼き魚

こうなった。焼いてしまうと見た目での判別は不可能。さて肝心の味や如何に。

真鯛の身皮なし

まずは真鯛を一口、味付けなしで食べてみた。…うまい。掛け値なしに。

真鯛はどんな風に料理してもうまいが、焼き魚が一番うまいのではないかと思う。

脂ののりはあまり感じられないものの、身はしっかりかつもっちりと柔らかく、たんぱくでシンプル。なので塩を付けても、醤油を付けても安定して美味。皮と一緒に食べると、芳ばしい香りが程好く鼻を抜ける。本当にうまい。さすが日本の高級魚の代名詞。和が誇る食材の質の高さを再確認できた。

チダイの身皮なし

続いてチダイ。個体差もあるかもしれないが、真鯛に比べ肉厚感がある。

一口頬張ると、ジュワっと旨味が口のなかに広がった。…これもうまい。基本的には真鯛と同じ白身魚の風味。味自体は真鯛とほとんど変わらないと言っていい。ただ、真鯛に比べてみずみずしさ、悪く言えば水っぽさを感じた。これは下ごしらえの塩降りの量と時間である程度調整できるだろうか。

トータルすると、真鯛とチダイの焼き魚では、味の違いはほぼない。食感はチダイの方が若干柔らかく感じた。また、チダイの方が脂と水分が多く感じられた。どちらも非常に美味だった。

刺身での味の違い

次に真鯛とチダイの刺身での味の違いを比較する

魚の切り身熟成

二匹のサンプルの半身をキッチンペーパーでつつみ、その上から更にラップを巻き上の写真のようにして、冷蔵庫で1日寝かせる。これにより身が熟成され柔らかくなり、旨味が増幅される。

真鯛の刺身

これが真鯛の刺身。個人的にマダイを生で食べるなら、釣りたての薄造りの方が好きなのだが、今回は味比べということで、旨味を引き出すために一晩熟成させた身を厚めに切って、とりあえず何も付けずに食べてみた。

味は、やはりうまい。生でも本質は変わらずたんぱく。臭みは全くない。白身魚特有の後味だけが残る。一晩寝かせて柔らかくなっているが、「ぐちゃ」ではなく「むにょ」という絶妙な案配の食感がいい。

また、わさび醤油をつけると、魚の風味と相まって更に美味。わさびは魚の味を引き立てる薬味であるが、シンプルにうまい真鯛と食べると逆にわさびの風味も引き立つ。やはり刺身が良いならわさびもいいものを合わせたい。今回はチューブで我慢。

チダイの刺身

続いてチダイの刺身。見た目は真鯛と全く変わらず、血合いのきれいな白身だ。

こちらもまずは何も付けずに一口食べてみた。…食感は真鯛より柔らかい。真鯛が「むにょ」ならチダイは「くちゃ」といった感じか。「ぐちゃ」まではいかないが、少し柔らかすぎる印象だ。焼き魚がそうだったように、水分が多いからだろう。味はやはり真鯛とほとんど変わらない。ただ、水分が多いためか、口の中で広範囲に味が広がり、たんぱくな魚の風味を真鯛より強く感じた

個人的には、刺身は真鯛の方が締まりがありうまいと感じた。ただしチダイ単体で出てきたら正直真鯛と区別できないほど、両者に食味の差はない。

味の違いの結果と考察

以上、真鯛とチダイの味の違いについては

  • 焼き魚ではチダイの方が柔らかくうまい
  • 刺身では真鯛の方が身が締まってうまい

という結果となった。多少の食感の違いはあるものの、どちらも非常に美味であった。

ただ、今回の結果は、釣った直後に締めて血抜きし、冷やし方にも配慮した最高鮮度のサンプルを使用したことが前提にある。

最高の鮮度を保った魚は、ものに限らず大体うまい。だがこれがスーパーで売られているような、締めず血抜きせずの状態で比較すると話が違ってくる。

水分は、魚の保存状態が良くないと、臭みを増幅させる要因になってしまう。

今回、チダイは真鯛と比較して水分が多かった。その水分の差が、鮮度が落ちた際の味の差として顕著に現れるはずだ。

つまり水分の多いチダイは、スーパーで売られているレベルの鮮度では、真鯛と比較してかなり味が落ちるだろうと推察される。

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真鯛とチダイの違いまとめ

以上、真鯛とチダイについて、見た目の違い、味の違いを比較・分析してみた。簡単にまとめると

見分け方については以下の3点がポイント。

  • チダイのエラブタの縁は真鯛より赤く太い
  • チダイの背びれの2.3本目の棘が長い
  • 真鯛の尾びれは黒い縁取りがある

味の違いについては以下の2点。

  • 鮮度が高い場合、真鯛とチダイに味の差はなく淡白でうまい
  • 鮮度が落ちると、チダイの方が味が落ちる

最後に、今回サンプルになってくれた真鯛とチダイのアラを仲良く一緒に鍋に入れ、潮汁にしたあとシメに雑炊を作っていただいた。

アラで作った雑炊

真鯛とチダイ、合わせて食べてもやっぱり、うまい。

なお、今回は3月に釣り上げた個体で検証したが、マダイとチダイで旬が違うため、調査時期により結果が変わってくることをご承知おきいただきたい。

旬のチダイのうまさは、ヘダイと比較した以下の記事で検証しているのでご参考まで。

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また、種類が豊富で違いが分かりにくい魚「カレイ」についても比較した記事をまとめたのでご参考まで。

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